富山の日常を旅するガイド

Edit/Text スピニー

目次

駅前、徒歩15分のとやま案内 2

富山駅・南口から徒歩15分圏内にある、とっておきの場所と味を紹介します。

  1. hazeru coffee
  2. A CORNER SHOP

歩いて5分 hazeru coffee

魅力あるまちには、いいコーヒー屋さんがある。

 富山はコーヒー屋さんに恵まれているまちだと思う。単にコーヒーがおいしいだけではない。どの店もバリスタの人柄が店の空気そのものになっていて、店ごとにそれぞれ個性がある。だから決まった一軒だけの常連になるのが少しもったいない気がして、いろんな店に通うことにしている。

 そして富山のコーヒー屋さんに共通しているのは、大通りから一本入った静かな場所にお店があること。県外や市外から富山を訪れる人たちに伝えたいのは、隠れるように佇んでいる素晴らしいお店を、どうか見つけて訪れてほしいということだ。

 2025年11月、富山市に本店がある『hazeru coffee』の新店が富山駅前にできたという話を聞いた。しかも「焼き菓子もあるよ」という素敵な情報付き。それは、行かねばなりません!

 お店に入ると、レジの横のガラス棚に7種類の焼き菓子が並んでいた。スコーン、ホットビスケット、マフィン、パウンドケーキ。どの焼き菓子も、シンプルで飾り気がなく、いい顔をしている。そのなかで私が気になったのは「発酵バタースコーン」だった。スコーンは紅茶に合わせるお菓子だと思い込んでいたけれど「コーヒー屋さんでもスコーンを選べるんだ」という小さな感動があった。そして発酵バターという言葉には、圧倒的な誘惑の力がある。

 ストアマネージャーの三島さんが「焼き菓子は、世田谷にある『OYATSUYA SUN』にレシピ監修と技術指導を受け、開店に向けて何ヵ月も練習したんです」と教えてくださった。シンプルな焼き菓子だからこそ、絶対においしいものを食べてもらいたいという真摯さが感じられる。そして『hazeru coffee』は本店もそうだけれど、手を差しのべるように声をかけてくださるのが上手い。三島さんの天の声にやさしく背中を押され、私は無事に「発酵バタースコーン」を選び、温かいカフェラテを注文した。

 個人的に、スコーンは立ち上がりの割れがおいしさの象徴だと思っている。「発酵バタースコーン」は、まさしく理想的な膨らみだった。外側がカリッとサクッとしていて、中がしっとり。その食感がたまらない。そして最大のときめきは、やはり発酵バターの香り。口に運び、噛む直前にふわりと広がる香り。そして食べ終えたあとに残る余韻が、あまりにも幸せだ。この記憶を定着させるために、しばらく目を閉じていたくなるほど。あれよあれよという間に、まちの人気者になるのも納得である。

 私にはこの店へ来たかった理由がもうひとつあった。コーヒーバッグに、友人の妹であるイラストレーターのアサバマリエさん(富山市出身)のイラストが使われているのだ。マリエちゃんは、書籍や雑誌の表紙、有名ブランドの商品パッケージなどを手がける超売れっ子イラストレーター。そんな雲の上の存在のようなマリエちゃんが、数年前に『hazeru coffee』で個展を開き、そのときに誕生したのが、ライチョウとオコジョ、カモシカの描かれたコーヒーバッグだ。県外の友人への富山みやげに重宝しているし、コーヒーバッグと同じカモシカ柄のコースターを愛用しているので、私にとってとても親しみのあるデザインでもある。
『hazeru coffee BAKE STAND』には、オープンに合わせてマリエちゃんが描いた立山連峰と、コーヒーバッグにもなっているオコジョの絵が飾られている。この絵がたくさんの人の目に触れていると思うだけで、私まで誇らしい。

 コーヒーは本店のラインナップに加えて、この店限定の「ベイクスタンドブレンド」が用意されている。そして私のお気に入りのカフェラテには、富山市で搾乳している低温殺菌の「アデア牛乳」を使っているとのこと。
知らず知らずのうちに人生に入り込んでくる、街の景色に溶け込んだ店が私は好きだ。『hazeru coffee BAKE STAND』もそんな店になっていくのだろう。そう思うと、うれしくてたまらない。

 コーヒー屋さんの個性や密度は、まちの文化度を測るひとつのものさしだ。だから私は魅力のあるまちには、やっぱりいいコーヒー屋さんがつきものだと思っている。

hazeru coffee BAKE STAND(テイクアウト専門)

富山市神通本町1-10-2
営 9:00〜16:00、土・日曜、祝日 9:00〜17:00
休 火曜
P 4台
Instagram @hazerucoffee_bakestand
現金またはキャッシュレス可

歩いて10分 A CORNER SHOP

週末の楽しみは、クラフトビールを角打ちで一杯。

 これまで富山駅前でお酒を飲むことは、あまり多くなかった。家から遠いとか、電車(市電)で行くのが少し面倒だとか。そんな理由からだ。でもこの店を知ってからは張り切って市電に乗って、駅前で飲むことが多くなったように思う。
 
 『A CORNER SHOP』は、吉野綾さんが営むクラフトビールの店。この店を知ったのは、誰かが上げたInstagramの投稿からだった。富山ではあまり見ない、空気の良さそうな雰囲気に惹かれたけれど、オープンしてしばらくはスマホの画面越しに見ているだけだった。
 
 そんなある日、Instagramにアップされた友人の投稿が、出不精な私の背中を押した。
「めっちゃいい店!」と、おいしそうなビールを楽しそうに飲んでいる。ただスマホ越しに見ていた私はなんだか悔しくなって、別の友人を誘い、急いで店へ向かった。
 

 お腹が空いているのと、待たずに着席したいという気持ちが重なって、店へ向かうときはいつも早足。エレベーターすら待てず、階段を下る。入店する直前に、黒板の日替わりメニューを横目で見て、いかにも昼休み中というサラリーマンにまじり、ときには相席で昼食をとる。タップ付きの冷蔵庫とカウンター、缶ビールを冷やす大型冷蔵庫に長テーブルがふたつ。店はコンパクトなつくりながらも、天井が高くて開放的な空間だ。そして富山には珍しい立ち飲みスタイル。
 
 注文は、好きなビールを選んでカウンターでキャッシュオン。タップには常時3〜4種類の日本のクラフトビールがあり、大きな冷蔵庫には缶のクラフトビールが揃う。国内6割、海外4割というセレクトだそう。もちろん富山のクラフトビールも置いてある。お腹が空いているのと、待たずに着席したいという気持ちが重なって、店へ向かうときはいつも早足。エレベーターすら待てず、階段を下る。入店する直前に、黒板の日替わりメニューを横目で見て、いかにも昼休み中というサラリーマンにまじり、ときには相席で昼食をとる。

 ビールの選び方は、自分の直感を信じるのみ。カラフルでかわいくて個性的なラベルにうっとりしながら、ピンとくるものを見つける。目移りしてなかなか決められないときもあるけれど、その時間すら楽しい。

 綾さんはもともとアパレル業界で働き、東京や海外でのバイヤー経験を積んだのち、コロナを機に地元・富山へ戻ってきたという。楽しいことがしたい。お店をやりたい。ビールが好き。そして富山に“女性ひとりでふらっと飲める店”をつくりたい。そんな気持ちが重なって、えい!と店をつくったそうだ。かっこいい。そのバイタリティに、私は心底しびれた。
 
 店名は綾さんの“A”と角打ちの“角=corner”から。県外のブルワリー勤務の経験もあるだけに、ビールのセレクトにはどこか光るものがある。
 
 この店は誰かと行っても楽しいけれど、ひとりで行くのにちょうどいい店だと思う。ビールを選んで飲んで、綾さんや周りのお客さんたちと世間話をして次の店へ。帰り際はいつも綾さんが笑顔で見送ってくれるので、後ろ髪を引かれてしまうのだけどね…。

 おつまみはスナックのほかに、日によって綾さんの手作りキッシュや焼き菓子などがある。なかでも「サンドイッチ」は一推しのメニュー。自家製パンにジャムとハムが挟まっている、甘くてしょっぱい、不思議な味わい。しっかりした噛みごたえと、絶妙な味のバランスがクセになる。アメリカのバーで食べた味を再現しているそうで、とにかくビールが進むのだ。

 ときどき料理人を招いたPOP UPも開催していて、若い人から高齢の方までさまざまな年代の人たちが同じテーブルを囲む。みんながこの店を介して混ざり合い、共にクラフトビールを楽しむ。それはごく普通のことなのかもしれないけれど、私にとっては新鮮で、とても愛おしい時間に感じられている。

 0次会にもぴったりだし、帰り道に軽く一杯もいい。市外の人が富山駅前に泊まったなら、この一軒があると、きっとうれしくなると思う。ホテルに戻る前にちょっとだけ寄れる場所があるというだけで、旅の満足度はぐっと上がる気がする。

 土曜と日曜は14時から開いている。昼からビールは、背徳感よりも解放感のほうが大きい。週末になったら、ぜひA CORNERを目指して歩いてみてほしい。(I)

A CORNER SHOP


富山市神通本町1-5-18 Banque-et 1F 2号室

営 金17:30~21:30、土・日曜14:00~20:00

休 月曜~木曜

P なし
P なし
現金またはPayPay
Instagram @a_cornershop

先頭へ