富山の日常を旅するガイド

Edit/Text スピニー

目次

駅前、徒歩15分のとやま案内 1

富山駅・南口から徒歩15分圏内にある、とっておきの場所と味を紹介します。

  1. パンドール
  2. おりーぶ

歩いて5分 パンドール

地元民が立ち寄るパン屋で過ごす、理想的な旅の朝。

 旅行や出張で県外を訪れたとき、宿泊した翌朝は、少しだけ早起きして散歩しながら街の空気を感じたい。地元の人が立ち寄るような喫茶店やパン屋さんを見つけられたら、そこで朝食をとる。こんな時間が、私にとって理想的な旅の朝だ。

 富山駅前にある『パンドール』は、こんなふうに考えている旅人のささやかな願いを叶えてくれる場所だ。イートインスペースは2席。コーヒーは1杯100円で、自分で入れるセルフサービススタイル。冷蔵庫には、富山でお馴染みの『とやまアルペン乳業』のコーヒー牛乳「カウヒー」の姿。机の上にはパンを温め直すためのアラジンのトースターと朝刊。朝を過ごすのに必要なものが、ここには全部揃っている。

 朝7時の開店に合わせて、店内にはサンドイッチや惣菜パンがきれいに並べられる。早い時間にやってくるお客さんは、目当てのパンが決まっているようだ。お店に入ると迷うことなくパンをいくつかトレーに載せて、レジへ直行。最短距離、最短時間での買い物が、いかにも朝らしい光景。

 実は私も『パンドール』で買うものは四半世紀以上変わらず「ブラックサンド」と決めている。黒糖の香りが漂う食パンに、スクランブルエッグ、ポテトサラダ、辛子ハムのサンドが各2切れずつ並んでいる。かつて富山駅前で働いていた私にとって、「ブラックサンド」は寝坊して家を出た朝の救世主だった。だから仕事を辞め、富山駅前に通わなくなってからも、お店に行くと「ブラックサンド」を手にする。もしも「ブラックサンド」が売り切れていたら、「ぶどうパンのサンドイッチ」。この2つを食べるたびに、当時の思い出がよみがえってきて面映ゆい。

 そもそも、私は『パンドール』の食パンが好きだ。粉の風味、もちもちとした食感、きめの細かさ、ちょうどいい耳の硬さ、きれいな白さ。どこをとっても好き。だから富山駅前のカフェで出される「小倉トースト」が、『パンドール』の食パンだということにもすぐに気付ける。友人や知人に『パンドール』を勧めるときは、食パンにジャムやバターを挟んだ「スペシアルサンド」を食べてもらう。「おいしい!」と言われると、自分のことを褒めてもらったような気持ちになる。
 店の隅には、食パンをスライスするときに出た「パン粉」が置いてある。買い物をしたら一人2袋まで持ち帰ってもOK。この贅沢な「パン粉」を使うだけで、家でつくるハンバーグがとてもおいしくなるのだ。

 私がよく通ったころは店主の山崎清一さんが中心となってパンを焼いていたが、今は息子の達也さんも加わっている。達也さんの役割は、新商品の考案やこれまでのパンを一層おいしくするために改良すること。大学でロシア語を学び、在学中にアメリカに留学していた達也さんは、今も英語に翻訳されたフランスのパンの本を読みながら、学び続けている。そのなかでハード系のパンが増え、ピタパンが登場し、日替わりのピザも並ぶようになった。スタンダードプードルと暮らしている達也さんは、火曜限定で犬用のパンも焼いている。そんな新しい試みを続けるなかでも、長年通うお客さんたちが思い描く「『パンドール』らしさ」は、大切に守られている。

 私にとっては、富山駅前で『パンドール』が変わらず店を開いていてくれること自体が、とてもありがたい。もはや実家のような存在に思える。いろいろなお店のパンを食べるけれど、それも安心して帰れる場所があるからこそなのかもしれない。(T)

パンドール

富山県富山市桜町1-6-11 山崎ビル1F
営 7:00〜18:00
休 日・水曜
※祝日は営業しているが、日・水曜と重なった場合はお休み
P 4台
Instagram @paindor_since1946
現金またはキャッシュレス可

歩いて5分 おりーぶ

満腹を約束してくれる、ビルの中にある地下食堂。

 富山駅から国道41号線方面へ向かう城址大通り沿いに、富山県農協会館という昭和後期に建てられたビルがある。地下1階にある食堂『おりーぶ』は、昼どきになると周辺で働くビジネスマンでいつも満席だ。誰もが入れる地下食堂という存在は富山では数少なく、ビルに入るときは「おじゃまします」と言いたくなる。

 お腹が空いているのと、待たずに着席したいという気持ちが重なって、店へ向かうときはいつも早足。エレベーターすら待てず、階段を下る。入店する直前に、黒板の日替わりメニューを横目で見て、いかにも昼休み中というサラリーマンにまじり、ときには相席で昼食をとる。

 8割以上のお客さんが日替わりを頼む中で、私の注文は「厚切りハムカツ定食」の一択だ。
運ばれてくると、まずは何もつけずにハムカツを頬張る。揚げたての衣がザクザクしている。そして薄すぎず厚すぎないハムの食感と塩味に「この味ですよね」と答え合わせをしたような気持ちになる。次に辛子醤油、その次はソースというように、味変しながら食べ進めていく。私は少食気味なので、3枚のハムカツのうち1枚は、いつも一緒に店を訪れた人に食べてもらう。
 店主の村田さんによれば「厚切りハムカツ定食」がグランドメニューになってまだ日が浅く(とは言っても何年も経っている)、人気の日替わりだったため格上げとなった。グランドメニューへ昇格したのは「豚バラの野菜炒め定食」との2品だけ。いつも次回は豚バラを食べようと思いながら店を後にするものの、私はこの数年、ハムカツ以外を口にしていない。

 ハムカツばかり食べているせいもあるが、私の中で『おりーぶ』は揚げもののイメージが強い。村田さんは、富山は揚げものが好きな人が多いけれど、キッチンが汚れてしまうので天ぷらやフライを家では作らないのではないかと分析している。「食卓にのぼるのは、スーパーや精肉店の揚げもの。おいしいけれど揚げたてには敵わないから、うちの店は揚げものを頼まれる人が多いんでしょうね」と話してくださった。需要の高さから、日替わりは週2、3回揚げものにしている。

 『おりーぶ』によく行くという知人たちに聞いてみると、豚汁やチキン南蛮、ハンバーグなど、各々好きな料理があった。日替わりの内容が週のはじめにSNSにアップされるので、内容を見て好きな料理の日に出かけるそうだ。そして、この写真を撮っているカメラマンのお気に入りはカツカレーとのこと。誰にでもチューニングを合わせられるのが素晴らしい。長年にわたり愛される食堂って、こういう懐の深いことを当たり前にやってのける。

 もうひとつ伝えたいのが、白ごはんのおいしさだ。飯碗にたっぷりと盛られていて、ひと口、ひと口に満足する。お米の値段が高い昨今、このボリュームに神々しさまで感じるようになった。農協会館という場所もあり、店ではお米の品質を保つことも大切にしている。地元の農協から仕入れた、富山県産コシヒカリしか使わない。

 食べ終わったら、待っている人のために素早く席を立つ。スカートのファスナーが割けそうなほど満腹になるので、ウエストがゴムの服で来ればよかったという後悔もいつものことだ。少しでもカロリーを消費できればと考えて、再び階段を上る。そして売店にちょっとだけ立ち寄ってから帰るところまでが、私の『おりーぶ』の使い方だ。(T)

コーヒー&食事 おりーぶ

富山市新総曲輪2-21 富山県農協会館B1F
営 10:30〜15:00(LO14:00)
※土・日曜、祝日と16:00以降は予約が必要
休 土・日曜、祝日
P なし
現金またはPayPay
Instagram @olive_jakaikan

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