なぜ富山市は『くすりとガラスの街』なのか

特集

北アルプスの山々に抱かれ、豊かな水と自然に恵まれた富山市。

古くから人々の暮らしを支えるものづくりの文化が育まれ、時代ごとに新たな技術や美意識を取り込みながら、独自の発展を遂げてきました。富山市が「くすりの街」と「ガラスの街」という二つの顔を持つようになった背景には、長い歴史の中で紡がれてきた理由があります。

なぜ富山市は『くすりとガラスの街』なのか

その背景にある物語をたどることで、この街の魅力はより立体的に見えてきます。
その物語を順にご紹介していきます。

昔なつかしいパッケージのお薬
富山のガラス作家作品

なぜ富山市はくすりの街なのか

江戸時代にはじまった『富山のくすり』

富山駅前の売薬さん銅像

300年以上の歴史を持つ、越中富山の薬売り。

「くすりの富山」として全国に知られるようになったきっかけとして、江戸時代の「江戸城腹痛事件」と呼ばれる逸話が伝えられています。

富山藩2代藩主・前田正甫(まえだ まさとし)が、江戸城で突然腹痛に見舞われた大名に「反魂丹(はんごんたん)」を服用させたところ、たちまち回復。その効き目に驚いた大名たちが、自分の領地でも販売してほしいと求めたことが、富山の薬売りが全国へ広がるきっかけになったといわれています。

そして、富山の薬売りを支えてきたのが、「先用後利(せんようこうり)」 という独自の商法です。売薬さんは、薬や商売道具を入れた「柳行李(やなぎごうり)」を携えて全国各地を巡り、各家庭に「配置薬の箱」を預けました。必要なときに薬を使ってもらい、次の訪問時に使った分だけ代金を受け取る仕組みです。こうした商法は、人々の暮らしを支えるとともに、薬売りとお客様との信頼関係を育んできました。

こうした歴史と伝統は現在にも受け継がれ、富山県は全国有数の医薬品生産拠点として発展を続けています。300年以上にわたる「くすりの富山」の歴史は、今も人々の暮らしの中に息づいています。

配置薬の箱
懐かしいパッケージのお薬
柳行李(やなぎごうり)
池田屋安兵衛商店

池田屋安兵衛商店

住所 〒930-0046 富山市堤町通り1-3-5
営業時間 【店舗】
9:00~18:00
【健康膳 薬都(2Fレストラン)】
11:30~14:00(ラストオーダー13:30)
休業日 【店舗】
年末年始
【薬都】
火曜日、水曜日、年末年始
薬種商の館 金岡邸

薬種商の館 金岡邸

住所 〒930-0992 富山市新庄町1-5-24
営業時間 9:30~17:00(入館は16:30まで)
休業日 毎週火曜日及び年末年始(12/29~1/3)

なぜ富山市はガラスの街なのか

『富山のくすり』に由来!?

富山駅構内のフロアシャンデリア(手前)とトランジット・ライティング・ウォール(奥)

富山市のガラス産業のルーツは、300年以上の伝統を持つ「富山の売薬」にあります。

明治・大正期には、薬の関連産業としてガラス製の薬びんの製造が盛んになり、全国トップクラスのシェアを誇りました。戦前には、富山駅周辺を中心に、溶解炉を備えたガラス工場が10社以上あったといわれています。

しかし、太平洋戦争末期の富山大空襲により、ガラス工場の大半が大きな被害を受けました。さらに戦後は、プラスチックの普及によって薬の容器もガラス製からプラスチック製へと移り変わり、富山とガラスのつながりは徐々に薄れていきました。

そんな中、かつて多くのガラス職人が活躍していた歴史に着目した富山市は、ガラスの将来性や国際性、市民との親和性に注目。昭和60年(1985年)に「市民大学ガラスコース」を開講しました。

この取り組みによって、市民がガラスに親しむ機会が生まれ、「ガラスの街とやま」への新たな歩みがスタートしました。そして、約30年にわたるガラスの街づくりの集大成として、平成27年(2015年)8月に「富山市ガラス美術館」が開館しました。

現在、富山市内では100名以上のガラス作家が活躍し、器や花瓶、アクセサリーから個性豊かなアート作品まで、多彩なガラス作品が生み出されています。かつて薬びんの製造から始まった富山のガラスは、今では暮らしとアートを彩る文化として発展を続けています。

【参考資料】広報とやま 平成28年(2016年)9月5日号

富山のガラス作家作品
富山ガラス工房
富山市ガラス美術館

『富山のガラス』がよくわかるスポット紹介

富山市ガラス美術館

富山市ガラス美術館

住所 富山市西町5-1 TOYAMAキラリ内
営業時間 9:30~18:00
(展示室への入場は17時30分まで)
休業日 第1・第3水曜日、年末年始 ※展示により異なる(臨時休館日あり、最新の情報はHPを参照)
富山ガラス工房

富山ガラス工房

住所 富山県富山市古沢152
営業時間 9:00~17:00
休業日 年末年始(12月28日~1月4日)

こうして富山市は、江戸時代から続く“くすり”の文化と、そこから派生したガラス産業という伝統を受け継いできました。そうして、現在では、ガラス芸術という新たな文化が芽吹き、街の魅力をいっそう豊かにしています。

命を守るための技、未来を見据えて育まれるガラス芸術。
それぞれが時代とともに形を変えながら、この街に息づく大切な文化として根づき、今の富山市を象徴する存在となっています。

だからこそ、富山市は今、『くすりとガラスの街』と呼ばれているのです。

富山のくすりとガラスを巡る

モデルコースのご紹介

富山のくすりとガラスを巡るおすすめモデルコース

富山市中心部を気軽に巡りながら、「くすり」と「ガラス」にまつわるスポットを楽しめる約2〜3時間の散策コースを紹介します。

移動は路面電車が便利。徒歩でもまわれるコンパクトさが魅力。路面電車の乗車代や美術館・博物館の入館料を合わせても、およそ1,000円ほどで気軽に富山の文化に触れられます。
道中では、ガラス美術館や富山城/富山市郷土博物館、池田屋安兵衛商店など、富山市の歴史や技が感じられるスポットを順に訪ねます。
さらに、昔ながらの風情が残る「島川あめ店」も周辺にあり、ちょっと寄り道にもぴったりです。

詳しいルートや見どころは、モデルコースのページでご紹介しています。
ぜひ、富山ならではの魅力を感じる小さな旅へお出かけください。

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