富山の日常を旅するガイド

満腹を約束してくれる、ビルの中にある地下食堂。
富山駅から国道41号線方面へ向かう城址大通り沿いに、富山県農協会館という昭和後期に建てられたビルがある。地下1階にある食堂『おりーぶ』は、昼どきになると周辺で働くビジネスマンでいつも満席だ。誰もが入れる地下食堂という存在は富山では数少なく、ビルに入るときは「おじゃまします」と言いたくなる。

お腹が空いているのと、待たずに着席したいという気持ちが重なって、店へ向かうときはいつも早足。エレベーターすら待てず、階段を下る。入店する直前に、黒板の日替わりメニューを横目で見て、いかにも昼休み中というサラリーマンにまじり、ときには相席で昼食をとる。


8割以上のお客さんが日替わりを頼む中で、私の注文は「厚切りハムカツ定食」の一択だ。
運ばれてくると、まずは何もつけずにハムカツを頬張る。揚げたての衣がザクザクしている。そして薄すぎず厚すぎないハムの食感と塩味に「この味ですよね」と答え合わせをしたような気持ちになる。次に辛子醤油、その次はソースというように、味変しながら食べ進めていく。私は少食気味なので、4枚のハムカツのうち1枚は、いつも一緒に店を訪れた人に食べてもらう。
店主の村田さんによれば「厚切りハムカツ定食」がグランドメニューになってまだ日が浅く(とは言っても何年も経っている)、人気の日替わりだったため格上げとなった。グランドメニューへ昇格したのは「豚バラの野菜炒め定食」との2品だけ。いつも次回は豚バラを食べようと思いながら店を後にするものの、私はこの数年、ハムカツ以外を口にしていない。

ハムカツばかり食べているせいもあるが、私の中で『おりーぶ』は揚げもののイメージが強い。村田さんは、富山は揚げものが好きな人が多いけれど、キッチンが汚れてしまうので天ぷらやフライを家では作らないのではないかと分析している。「食卓にのぼるのは、スーパーや精肉店の揚げもの。おいしいけれど揚げたてには敵わないから、うちの店は揚げものを頼まれる人が多いんでしょうね」と話してくださった。需要の高さから、日替わりは週2、3回揚げものにしている。

『おりーぶ』によく行くという知人たちに聞いてみると、豚汁やチキン南蛮、ハンバーグなど、各々好きな料理があった。日替わりの内容が週のはじめにSNSにアップされるので、内容を見て好きな料理の日に出かけるそうだ。そして、この写真を撮っているカメラマンのお気に入りはカツカレーとのこと。誰にでもチューニングを合わせられるのが素晴らしい。長年にわたり愛される食堂って、こういう懐の深いことを当たり前にやってのける。

もうひとつ伝えたいのが、白ごはんのおいしさだ。飯碗にたっぷりと盛られていて、ひと口、ひと口に満足する。お米の値段が高い昨今、このボリュームに神々しさまで感じるようになった。農協会館という場所もあり、店ではお米の品質を保つことも大切にしている。地元の農協から仕入れた、富山県産コシヒカリしか使わない。
食べ終わったら、待っている人のために素早く席を立つ。スカートのファスナーが割けそうなほど満腹になるので、ウエストがゴムの服で来ればよかったという後悔もいつものことだ。少しでもカロリーを消費できればと考えて、再び階段を上る。そして売店にちょっとだけ立ち寄ってから帰るところまでが、私の『おりーぶ』の使い方だ。(T)
コーヒー&食事 おりーぶ
富山市新総曲輪2-21 富山県農協会館B1F
営 10:30〜15:00(LO14:00)
※土・日曜、祝日と16:00以降は予約が必要
休 土・日曜、祝日
P なし
現金またはPayPay
Instagram @olive_jakaikan

