富山の日常を旅するガイド

Edit/Text スピニー

歩いて5分 hazeru coffee

魅力あるまちには、いいコーヒー屋さんがある。

 富山はコーヒー屋さんに恵まれているまちだと思う。単にコーヒーがおいしいだけではない。どの店もバリスタの人柄が店の空気そのものになっていて、店ごとにそれぞれ個性がある。だから決まった一軒だけの常連になるのが少しもったいない気がして、いろんな店に通うことにしている。

 そして富山のコーヒー屋さんに共通しているのは、大通りから一本入った静かな場所にお店があること。県外や市外から富山を訪れる人たちに伝えたいのは、隠れるように佇んでいる素晴らしいお店を、どうか見つけて訪れてほしいということだ。

 2025年11月、富山市に本店がある『hazeru coffee』の新店が富山駅前にできたという話を聞いた。しかも「焼き菓子もあるよ」という素敵な情報付き。それは、行かねばなりません!

 お店に入ると、レジの横のガラス棚に7種類の焼き菓子が並んでいた。スコーン、ホットビスケット、マフィン、パウンドケーキ。どの焼き菓子も、シンプルで飾り気がなく、いい顔をしている。そのなかで私が気になったのは「発酵バタースコーン」だった。スコーンは紅茶に合わせるお菓子だと思い込んでいたけれど「コーヒー屋さんでもスコーンを選べるんだ」という小さな感動があった。そして発酵バターという言葉には、圧倒的な誘惑の力がある。

 ストアマネージャーの三島さんが「焼き菓子は、世田谷にある『OYATSUYA SUN』にレシピ監修と技術指導を受け、開店に向けて何ヵ月も練習したんです」と教えてくださった。シンプルな焼き菓子だからこそ、絶対においしいものを食べてもらいたいという真摯さが感じられる。そして『hazeru coffee』は本店もそうだけれど、手を差しのべるように声をかけてくださるのが上手い。三島さんの天の声にやさしく背中を押され、私は無事に「発酵バタースコーン」を選び、温かいカフェラテを注文した。

 個人的に、スコーンは立ち上がりの割れがおいしさの象徴だと思っている。「発酵バタースコーン」は、まさしく理想的な膨らみだった。外側がカリッとサクッとしていて、中がしっとり。その食感がたまらない。そして最大のときめきは、やはり発酵バターの香り。口に運び、噛む直前にふわりと広がる香り。そして食べ終えたあとに残る余韻が、あまりにも幸せだ。この記憶を定着させるために、しばらく目を閉じていたくなるほど。あれよあれよという間に、まちの人気者になるのも納得である。

 私にはこの店へ来たかった理由がもうひとつあった。コーヒーバッグに、友人の妹であるイラストレーターのアサバマリエさん(富山市出身)のイラストが使われているのだ。マリエちゃんは、書籍や雑誌の表紙、有名ブランドの商品パッケージなどを手がける超売れっ子イラストレーター。そんな雲の上の存在のようなマリエちゃんが、数年前に『hazeru coffee』で個展を開き、そのときに誕生したのが、ライチョウとオコジョ、カモシカの描かれたコーヒーバッグだ。県外の友人への富山みやげに重宝しているし、コーヒーバッグと同じカモシカ柄のコースターを愛用しているので、私にとってとても親しみのあるデザインでもある。

 『hazeru coffee BAKE STAND』には、オープンに合わせてマリエちゃんが描いた立山連峰と、コーヒーバッグにもなっているオコジョの絵が飾られている。この絵がたくさんの人の目に触れていると思うだけで、私まで誇らしい。

 コーヒーは本店のラインナップに加えて、この店限定の「ベイクスタンドブレンド」が用意されている。そして私のお気に入りのカフェラテには、富山市で搾乳している低温殺菌の「アデア牛乳」を使っているとのこと。

 知らず知らずのうちに人生に入り込んでくる、街の景色に溶け込んだ店が私は好きだ。『hazeru coffee BAKE STAND』もそんな店になっていくのだろう。そう思うと、うれしくてたまらない。

 コーヒー屋さんの個性や密度は、まちの文化度を測るひとつのものさしだ。だから私は魅力のあるまちには、やっぱりいいコーヒー屋さんがつきものだと思っている。

hazeru coffee BAKE STAND(テイクアウト専門)

富山市神通本町1-10-2
営 8:00〜16:00、土・日曜、祝日 9:00〜17:00
休 火曜
P 2台
Instagram @hazerucoffee_bakestand
現金またはキャッシュレス可

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