富山の日常を旅するガイド

Edit/Text スピニー

富山のみの市

早起きして富山の日常を楽しむ、第1日曜日。

 毎月第1日曜の朝は、いつもより少し早起きする。向かうのは『富山縣護國神社』の「富山のみの市」。午前7時を過ぎると人が一気に増えるので、いつも6時30分には到着する。それでももう、帰る人たちにすれ違う。境内はすでにたくさんのお店と買い物客であふれている。

 初めて出かけたのは、高校生のとき。クラスメートの菜穂子ちゃんがミリタリー系のバッグを学校に持ってきて「どこで買ったの?」と聞いたのがきっかけだ。翌月の第1日曜の朝、自宅から約40分かけて自転車を漕いで出かけた。「朝からこんなに楽しいことをやっている場所があるんだ」と思い、お客さんが店主に価格交渉しながら買い物する様子を、夢中になって眺めた。
 
 あの頃も賑わっていたけれど、ここ数年は、出店者もお客さんもかなり増えた。マイペースな私は、誰かと行くと大抵の場合はぐれてしまうので、原色系の服を着て出かけ、一緒に来た人が見つけやすいようにしている。

古道具や骨董品、古着や絵画、手づくり品、鉢植え、切花、うどん・そば、お菓子—-。いろんな人が、いろんなお店を出している。品々を眺め、手にして「これ」と思ったものは即買い。ほかの店を見ている間に売れることもあるので、気に入った古道具や骨董品に出合ったら「迷わず買う」が私のルールだ。

 最近の私には、お目当てが2つある。ひとつは造花屋さん。布で作られた季節の花々が並んでいる。5月はドクダミと露草、7月はアジサイを買った。シンプルで素朴な造形、切りっぱなしの布のほつれまでもが、愛しくてたまらない。この花たちが飾られた部屋を想像するだけで幸せな気持ちに浸れる。
 
 もうひとつは茶道具に見立てられるものを探すこと。アンティークのアクセサリーケースを薄茶器にしたり、カフェオレボウルでお茶を点てたり、古い裂地で仕覆をつくったり。のみの市は私にとって、茶道具との出会いの場でもある。

 朝食は「マンダジ」という揚げパンとミルクティーがお約束だ。スパイスが香る揚げパンは、少食の私の胃にはちょうどいい大きさ。ずっとお客さんが並んでいるので、お店の人は生地を捏ねては揚げる作業を延々と繰り返している。そして鳥居の近くにある「みたらし団子」をおみやげにして家に帰る。滞在時間は1時間半くらい。

 つい最近『スピニー』を一緒に作っている居場さんと京角さんとのみの市へ出かけた。 2人は神社の隣にある公園のベンチで、買い物が終わらない私を待っていてくれた。買ったばかりのオカルト雑誌をめくりながらゲラゲラ笑う2人は、学生時代の放課後そのもの。すぐに声をかけるのがもったいない気がして、少しだけ遠くから2人を眺めていた。もしかすると人生で一番幸せな時間なんじゃないかと思うくらい、平和で尊いひとときだった。

 社会全体でも身近でも、いろんなことが目まぐるしく変わっている。でものみの市に来ると、鳥居のそばで団子が焼かれていて、参道の脇の砂利の上や土俵を囲むように店が並び、誰かがいらなくなったものを別の誰かが喜んで買っている。そんな循環の繰り返しを眺めていると、この街は、昔から今日まで途切れずにつながっているのだと思えてうれしくなる。だから、第1日曜の朝は早起きして、富山の日常を楽しんでいる。

 「富山のみの市」は、ローカルな空気に満ちた、富山の素の姿そのものだ。地域の人が重ねてきた年月が、ゆるい活気と温かな雰囲気を生んだ。誰でも受け入れる懐の深さ、やさしさがある。ここに来れば、きっと富山を好きになってもらえる。 (T)

INFORMATION
富山のみの市


開催日
原則、毎月第1日曜日
開催時間
4月~10月 5:00~12:00
11月~3月 6:00~12:00
会場
富山縣護國神社 境内
住所
富山県富山市磯部町1-1

アクセス

富山駅から市内電車「富山大学前」行きで「安野屋」電停まで約7分。下車後、徒歩約3分。
備考
※神社行事や天候等により、開催日・終了時間が変更となる場合があります。最新情報は富山縣護國神社公式ホームページをご確認ください。
https://www.toyama-gokoku.jp/nominoichi/

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